福岡市美術館

アクロス福岡に続く博多視察は、福岡市美術館
故・前川國男氏の晩年の設計作品になるこの美術館は1979年竣工で既に築36年経過。
大濠公園側からのアプローチだったので、低く抑えられた建物が大階段の向こう側に控え目に見えます。雨ザーザーでしたが、このエスプラナードが見えた時点でテンション大幅UP!敷地内に吸い込まれるようです。。。
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そして、緩い階段を上っていくと、深い色をしたレンガ色の壁が・・・
これが、前川建築の特徴ともいえる「打込みタイル」。普通のタイル張りの剥離や劣化といった欠点を解決するために生み出された工法。ということはなんとなく知っていましたが、実物の釉薬の醸し出す色合いは本当に美しい。本を見ても分からなかった焼き物のような深みを感じました。
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打込みタイル、ズームアップ。数ある打込みタイルを使った前川建築ですが、建物ごとに土の材質、焼き方、釉薬のかけ方、タイルの大きさ等を検討・試作してそれぞれの風土や特徴に見合ったものを採用したそうです。
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タイルのパターンもスチールの使い方もいちいちかわいかっこいい。
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ぽこっとかわいい。
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全く関係ないですがこれを見てデンマークのルイジアナ美術館のこの壁面を思い出しました。。。※1999年6月撮影
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さて、正面ですが、こちら側からは1層しか見えず、空が広いです。
空と大地、のような、建物はどこまでも控え目な印象。
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ロビーはRの天井がすてき。低めの家具もすてきです。
竣工当時から大切に使われているのでは?と思われます・・・。
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おまけ。トイレのゴミ箱。こちらも長く大切に使われているような・・・。
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※後日知ったのですが、
福岡市美術館リニューアルPFI事業、大林組グループが落札
巨匠の建築意匠を継承するPFI、福岡市美術館
とのこと。

来年9月から2019年3月までリニューアル工事に入るそうです!!

アクロス福岡

珍しく福岡県の博多に出張だったので、帰り際にアクロス福岡に立ち寄ってきました(2015.11.26)。
1995年に竣工し“都市緑化”の先駆けとなったこのビル。早くも築20年経過。
今ではビルというより山そのもの。竣工後も補植したり鳥が種を運んで来たりして、植物の種類や本数はどんどん増えているのだそう。管理は、雨水利用や落ち葉利用をしているから、無潅水だし施肥も行っていない、と本に書いてありました。
見るからに植物は生き生きと根付いていて、逆に躯体の方は大丈夫かな…と心配してしまうくらいの成長ぶり。
今は赤く紅葉したハゼノキが山全体に彩りを添えています。
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オオハマボウ?!北限は屋久島とも言われるけど福岡でも育っています。
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ちょうどお昼時だったので、サラリーマンが数人エッサエッサとランニング登山していました。
いい運動!赤い実は何でしょう・・・ウメモドキ?(自信無し)
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滝周りはビャクシン類が勢力拡大中・・・本当に階段まで覆い尽くしそうな勢いです。
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お仕事ヤギさん@立川

IKEA立川オープンから1年半。外構植栽の秋の景が気になり久しぶりに来訪。
青に黄色いサインが見えてきた!と思ったら隣地のフェンス内でもそもそと動く物体が・・・
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ヤギさんでした!!今、大流行中のヤギの除草のようです。
調べてみると・・・地元ではとても有名&癒しキャラのよう。

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木陰でのんびり。。。15頭でこの広さ、結構大変そうですね。。。
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本題のIKEA立川は・・・植物は少しずつ成長し根付いてきているようです。

南面のモミジは紅葉してるけど東面はまだ青々と・・・場所によって色づきが全然違います。
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次は、赤い実4連発。
上からガマズミ、常緑ヤマボウシ、ナンテン、ソヨゴ。
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すっかり日も短くなった秋の一日でした。
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石積みの風景

2011年9月 岡山県玉野市で出会った石積みの風景。
このディープでかっこいい坂道に息子と吸い寄せられ、登ってみた・・・

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手前の側溝もおそろいの切石です(サビ御影)。

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不揃いの切石を矢羽積にしているので、きっちりした間知石積みよりも味があります。
上部だけ少し野面石積みというのがポイントでしょうか。

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ディテールは両サイド違うけど、石積み+生垣で調和しています。
左側は目地にセメントが出ていなくてこだわりが感じられました。それとも、空石積みか?
右側の生垣は関東ではあまり見かけないナワシログミの生垣でした。

所沢聖地霊園礼拝堂・納骨堂

私の好きな空間の一つにの所沢聖地霊園礼拝堂・納骨堂(1973年 池原義郎設計)がある。
所沢聖地霊園は私の祖父母が眠る場所で、初めて建物の中に入ったのは建築学科に入りたての大学1年の頃だったと思う。
建築に関する知識もほとんど無かった頃だけど、アプローチから何かすごい衝撃を受けたことだけはよく覚えている。
今ならその演出にどれだけ労力をかけて緻密に設計されているのかが良く分かる。いや、まだまだか・・・
園路の微妙な変化、ウォールの見せ方、建物の閉じ方・開き方、芝生地の傾斜と背景林・・・
全てが統合されてあのシークエンスが成り立つのだな、と鳥肌が立つ。そしてディテールの創りこみ。

先日のお彼岸に、たまたま礼拝堂が開いていたので久しぶりにそっと入ってみた。
年月を経てもその感動は変わらない。

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©2014Google

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愛知県立芸術大学

久しぶりにゾクゾクする空間に遭遇してしまった。
故 吉村順三氏設計の愛知県立芸術大学
緩い傾斜地(丘陵地)に校舎や寄宿舎が程よいスケール感を持ちながら配置されている。
低く抑えられた建物と建物をつなぐ渡り廊下や軒の水平ラインが、かっこいい。
かっこいいけど威圧的でないのがすごい。
(すごいとかかっこいいとかなんて稚拙な表現力!)

1966年創立ということで、すでに約半世紀が経過しているため、樹木も風格を増し、建物をより惹き立てているように感じる。と同時に老朽化も否めない・・・

事前情報をあまり持たずに行ってしまったが、調べると、老朽化によるなし崩し的な建替えが問題になっているらしい。
「吉村順三の仕事を今、学ぶ」とキャンパスの大規模改修問題を追う>>
DOCOMOMO JAPAN 選定にも入っているが、私が訪れた時にはすでに外人校舎などは跡形も無く、立派な音楽学部棟が新築されていた。次に行く時はどうなっているのだろう。吉村氏のデザイン意図が継承されることを祈るばかり・・・
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東京ディズニーランドのランドスケープ

1ヶ月ほど前に20数年ぶりに東京ディズニーランドに行ってきました。子連れにて。。
子供にとっては、小学生でディズニーランドデビュー、とは若干遅咲きでしょうか。親である私が、なんとなくテーマパークというものが苦手で、割と近くのサンリオピューロランドですら連れて行ってないという…。
Wikipediaを見ると全国にテーマパークってこんなにたくさんあるのですね。「かつて存在したテーマパーク」というまとめも痛々しい…倉敷チボリとか長崎オランダ村とか…ほとんど2000~2010年の間に破綻していることがわかります。

さて、そんな明暗分かれるテーマパークの中でも、常にハイレベルな運営を維持している東京ディズニーランドなので、若干(かなり?)仕事目線を持ちつつ入園。
マップ>>

…と、入った瞬間からその演出力にやられました。
ゴミひとつない手入れの行き届いた園内、テーマごとの作り込み、控えめなサイン・自販機、気持ちの良いキャスト(スタッフ)の対応、そして何よりも生き生きとした植栽!

↓ワールドバザールを抜けて広がる風景。平面を見ると中心となるシンデレラ城に向かって遠近法がとられているため、求心性がより強められているのでしょう。両側はオリーブの並木で演出。
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「ランドスケープデザインNo.65(2009年4月号)」の特集『テーマパークに学ぶランドスケープ・マネジメント』によると、7つのテーマランドは舞台となる国・地域がそれぞれ設定されているのですが、日本との気候帯の違いにより、単純にその国の植物を導入して表現することはできません。そこで、日本の植物も含め、各テーマランドにふさわしい植物を選び出し再構成しているそうです。たとえば南国の森を表現するアドベンチャーランドにはモウソウチクやビワ、ヤブラン、ツワブキなど、和のイメージが強い植物も効果的に導入されているのです。
また、臨海埋立地という潮風害や寒害を受けやすい特殊環境を克服するために、外周に高さ約4mのバーム(汀段)を設けるとともに、スプリンクラーによる塩分洗浄を徹底することで植物を塩害から守っているのだそうです。

↓こちらはウエスタンリバー鉄道からの風景。シカはもちろんフェイクです。クロマツもなぜか馴染んでいて、この奥行きのある人形-緑-水-緑-人形の構成がすばらしい。
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↓これもウエスタンランド。この護岸の森にはアメリカフウやカエデ類が多用されているようです。秋・冬のシーンも見てみたい。
池の水も設備が見えないように程よく濁らせているのだそうです。抜かりない演出…
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↓ロビンソン一家がたどり着いた無人島。という設定。手前の巨木は擬木です… 足元にある花木はセンダンでしょうか。こんな所で出会えるとは!
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↓遊び心満載のトゥーンタウン。このカイヅカイブキの巻き巻き刈り込み、子供も大うけ。
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↓一歩間違うと下品になりがちな原色の花壇ですが、絶妙なバランス。一つ一つの花壇に年間計画(フラワーカレンダー)があるそうです。
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また、なぜか園内には全体案内サインが見当たらず、みんな地図を片手に散策することになります。でも、わからなかったらキャストに聞けば親切に答えてくれる、という安心感があるのでクレームにはつながらないのでしょうね。
↓方向感覚を失っても、たいていシンデレラ城が見えるというのも迷子になりにくい要因かもしれません。
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アトラクションに何度もつき合わされフラフラしながらも、印象的なシーンを撮影していたら、あっという間に夕暮れに。また違う季節に来ようと決意した一日でした。

※こんな本もありました。
  

進化する地図情報

新しい業務は、たいていその場所について調べることから始まります。地形・水系・植生・歴史・交通・法規制etc.
以前は図書館や市役所などに行って資料をかき集めるのが定番でしたが、最近では、まずはインターネットで…というのが当たり前に。まさかこんなに便利な時代がくるなんて。

●特に恩恵に預かっているのは、国土交通省国土地理院の地図サイト。
地理院地図(電子国土WEB):標準地図だけでなく年代別航空写真や色別標高図、宅地利用動向など。レイヤーたくさん。昨年から3D表示もできるようになりました。

●さらに、環境省自然環境局の生物多様性情報センターのサイト
これだけの自然環境情報をWEBで公開してくれるとは有り難い限り。
自然環境調査の一覧:こんなに調査項目があります。
自然環境情報提供GISシステム:KMLデータとshapeデータがあります。
植生調査(第6回~):お目当ての場所の二次メッシュをクリックすると、現存植生図(scale 1/25000 または1/50000)のJPEGファイル、PDFファイル、GISデータ(シェイプファイル)がダウンロードできます。

ちなみにGoogle Earth上に、上記GISの植生データを表示したらこんな感じに。クリックすると群集・群落ごとに概要も見られて便利です。
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●さらにさらに、埼玉大学教育学部 人文地理学研究室 谷 謙二先生による時系列地形図閲覧サイト。
今昔マップon the web:1896年以降の古地図が現在のグーグルマップ上に表示できて、土地利用変遷が瞬時に分かる。すばらしい。時の経つのを忘れます。。。
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●最後に、gridscapes.netさんによる
東京地形地図:東京とはいえ、川崎市も含まれていて感激。この毛細血管のような「川だけ地図」もいつか重ねてみたい。
↓わが町の地名「細山」って標高121mの立派な山なんだ!
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以上、日々進化する地図情報(の一部)でした。

中村正義の美術館

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庭のモミジもすっかり色づき、周りの森も燃えるような風景に。ここで過ごす初めての冬がやってきました。

昨日は紅葉狩りに来た両親と、中村正義の美術館へ。ぽっくりぽっくり歩くこと5分。
小さいながらもとても手入れの行き届いた素敵な所で居心地が良い。出された緑茶を片手に絵と庭をぼーっと眺める贅沢な時間。
館長さん(正義氏の娘さん)も凛として素敵な方。手を加えすぎず自然体な雰囲気の庭と建物は、この方そのものなのだなぁ。
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ピンコロ舗装

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2年程前に立ち寄った箱根のポーラ美術館のアプローチ空間がとても印象的だった。ヒメシャラの大木を残しながら、大胆に割肌のピンコロ舗装で地をつくって、ガラスやステンレスなどの小施設を引き立てる。ミニマムだけど質感がある。
写真を見返してみて改めて、こういう空間好きだなーと思ったりして…

が、現地では気付かなかったのだが、よく見ると主動線上のピンコロの目地モルタルが増し打ちされている。
「歩きにくい!」などのクレームがあったのか、最低限の改修がなされていた。
確かにベビーカーでも押している時だったらその歩きにくさ、押しにくさにイラッと来たかもしれない。
ヨーロッパではパブリックな場所でも普通に使われているピンコロ舗装だが、日本での使用はそれなりの覚悟が必要なのだ。