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日本造園学会誌 研究発表論文集21
 vol.66 no.5/2003.03
尾瀬ヶ原の木道上における利用者間の距離と混雑感及び混雑不快感との関係性 /田村裕希・望月寛・麻生恵

The Relationship between Personal Distance on a Wooden Path and Crowding or Discomfort in Ozegahara of Nikko National Park   /Yuki TAMURA, Hiroshi MOCHIZUKI, Megumi ASO

キーワード: 国立公園, 混雑感, 尾瀬ヶ原, 対人距離
Keywords: National Park, crowding, Ozegahara, Personal Distance

摘要:
 日光国立公園の尾瀬ヶ原における適正利用の参考値を導き出すために、年間で最も入山者の多い時期の休日に面接調査と流動調査を同時に行い、実際の歩行体験の中で混雑感及び混雑不快感を受けた時の木道上の利用者間距離(間距)を分析した。
 その結果両者には深い関係性が認められ、特に間距が4.0m/人になると過半数の人が混雑不快感を受ける事が判明した。さらに進行方向と対面方向の間距の組合せによっても混雑の感じ方に違いが見られ、通常混雑不快感は進行方向間距に強く影響を受ける事が分かった。ただしゆっくり歩きたい人や立ち止まりたい人に限っては、対面方向間距の影響を受けやすいことも明らかとなった。
 それら分析の結果、尾瀬ヶ原における限界間距は4.2m/人、理想間距は9.2m/人と設定する事が妥当であると示された。
Summary:
This study aims to show a Standard Comfort Distance and a Minimum Comfort Distance in Ozegahara of Nikko National Park, one of the most popular parks in Japan. In order to analyze the relationship between personal distance on a wooden path and a hiker's feeling of crowding or discomfort, a series of interviews about people's feeling of crowding was conducted during the tourist season in Ozegahara. At the same time, the number of passersby was counted every 15 minutes at each corner of the path, and both results were analyzed together. The analysis showed that crowding perceived by hikers significantly increased when their personal distance became limited. The majority of subjects felt discomfort due to overcrowding, when their personal distance was about 4.0 meters or less. Moreover, same direction traffic was usually found to influence the amount of hiker discomfort more strongly than opposite direction traffic, except for hikers who wanted to walk slowly, in which case opposite direction traffic was found to influence hiker discomfort more strongly. Based on our analysis, we concluded that the Standard Comfort Distance is 9.2 meters per person and the Minimum Comfort Distance is 4.2 meters per person in Ozegahara of Nikko National Park.
全文:CiNii>>
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1.研究の背景及び目的
日光国立公園尾瀬地区においては、ミズバショウ期・ニッコウキスゲ期・紅葉期の「特定シーズン」、土日祝日などの「特定日」、鳩待峠口・沼山峠口の「特定入山口」に利用者が集中し、それら混雑時及び混雑場所における木道上には頻繁に利用者の行列が発生する。そのため、ゆったりとした風景観賞が困難となったり、木道からのはみ出し歩行によって植生が踏み荒らされたりする等の問題点が指摘されている1。しかし現在の所、自然公園内における利用人数制限のための基準値は設定されていないため2、その対策としては利用者への平日利用または非混雑ルート利用の呼びかけや、利用集中日におけるマイカー規制等に止まっている。地区全体の年間入山者数推移から見ると、マイカー規制は入山者数抑制に対する一定の効果がある3とされるが、利用集中時においては効果が不十分であるため4、その他の手段による利用調整対策が急務である。
自然公園の利用調整を行うに当たっては、景観的観点及び生態的観点と同時に、利用者側の快適性を確保する観点からの検討が必要であり5、さらに自然公園には生態系保護のために利用者が散策できる園路を木道等によって限定し面的な利用を制限している区域が多いことより、線的な利用密度と混雑感及び混雑不快感との関係性の検討が重要となる。
従来の利用密度と混雑感に関する研究は、都市空間を対象としたものが大半を占め、R・ソマー6は人間が他人との間にとるスペース(パーソナルスペース)の重要性や個々人の性格・体型等によるその空間容量の個人差について指摘し、それに対する配慮を欠いた都市空間を批判した。E・ホール7は人間同士間の距離がコミュニケーションとの関係によって使い分けられていることに着目し、密接・個体・社会・公衆と対人距離の4区分を行った。それを受けて高橋ら8は室内で他人同士が接近できる限界値:3mを、北田ら9は屋外広場での知人同士の歩行時対人距離:60cmを各々提唱する等10、多様な行為や異なった条件下での対人距離数値を明らかにした。また、J・J・フルーイン11は群衆歩行空間を理論化することで都市空間のサービス水準を6段階に区分し、歩行路・階段・待ち空間等における段階的利用密度を設計基準として設定した。しかし本来都市空間(屋内・屋外)及び自然空間の各々における混雑感覚は異なる12,13といわれているため、上記結果の自然空間への適用は過剰利用を促進する危険性があり得る。
一方、自然空間を対象とした利用密度と混雑感に関する研究としては江山ら14が既往の対人距離等研究結果に独自の影響圏論及び段階理論を勘案し、人間標準間距として0m〜4,000mを23段階に再分類した。その中で、実測法による上高地での理想間距値は43.2mと第16段階に位置づけられたが、自然空間では立地条件の違いによって各々別の基準値が存在するとし、尾瀬その他の広汎な高原景観では上高地とは異なった基準値が該当するであろうと推論されている。また、小林ら15は知床での調査により遭遇人数と混雑感との関係性を指摘したが、混雑不快感との関連性については認められなかった。愛甲ら16は現地での写真評価によって写真全体の人数と混雑感との関係性を指摘したが、写真中の人の配置による影響が無視できないとし、許容限界値の算定までには至っていない。
そこで本研究は、広汎な湿原空間を有する日光国立公園尾瀬地区の尾瀬ヶ原において、実際の歩行体験の中で混雑感及び混雑不快感を受けた時の木道上の利用密度を分析し、適正利用の参考値になりうる利用者間の距離(以下、「間距」と称す)を導き出し、さらに進行及び対面方向の間距が混雑不快感に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
2.研究方法
(1)調査方法
日光国立公園尾瀬地区の尾瀬ヶ原において、年間で最も混雑が予想されるミズバショウ期の休日に当たる2002年6月8日(土),9日(日)に面接調査及び流動調査を行った。
面接調査では、入山時刻、通過コース、休憩場所及び時間、尾瀬ヶ原内の10区間別混雑感及び混雑不快感に関する意見17、尾瀬ヶ原の木道歩行イメージ(以下、「歩行イメージ」と称す)による限界間距値及び理想間距値18の質問を行った。面接調査員の配置は、8日は尾瀬ヶ原内の各区間における意見サンプルを均等に回収するため、牛首分岐・竜宮・見晴・東電小屋・山ノ鼻(午後のみ)の5カ所とし、9日は特に混雑が予想される竜宮以西のサンプルを集中して回収するため、牛首分岐及び竜宮の2カ所とした。
流動調査においても面接調査と同様の理由により、8日は鳩待峠・山ノ鼻・牛首分岐・竜宮・ヨッピ吊橋・見晴・見晴北の7地点に調査員を配置し、10区間始終点別且つ2方向別(以下、40区間区分)に15分単位の通過人数を計測し、9日は、鳩待峠・山ノ鼻・牛首分岐・竜宮・ヨッピ吊橋の5地点に絞り込み、7区間始終点別且つ2方向別に15分単位の通過人数を計測した。
(2)分析方法
(豗)通過区間と利用密度との照合
面接調査回答者が通過した時の各区間における利用密度及び混雑意見が出された時の各区間における利用密度を把握するため、面接調査による各回答者の通過コース、入山時刻、休憩場所及び時間等の情報から、各通過区間始点側の通過時刻を30分単位で推定した。次に、当該結果と40区間区分30分単位に通過人数を集計した流動調査結果(表−2)との照合を行った。
(豩)間距の算出
通過時の利用密度を算出するに当たり、40区間区分30分単位の各通過人数を間距値(m/人)として換算した。ただし間距算出に当たっては、尾瀬ヶ原内では通常2本の木道が1組となって設置されており利用者は右側通行を厳守しているため、図−2の通り、進行方向と対面方向の2方向をそれぞれ別の利用密度として考える「複線と見なした場合(進行方向及び対面方向)」と、2本の木道の利用密度を合算して考える「単線と見なした場合」とに分けて行った。従って、図−3の通り、同区間同時間帯においては6つの間距値が存在することとなり、各間距値算定式は以下のように示される。
x:進行方向が1時間に進む距離(m/h)
y:対面方向が1時間に進む距離(m/h)
a:進行方向の30分当たりの区間始点通過人数(人/30分)
b:対面方向の30分当たりの区間終点通過人数(人/30分)
c:対面方向がx進んだ時間分の区間終点通過人数
〔=2b×x/y(人/h)〕 と仮定すると、
複線と見なした場合:
進行方向間距(以下、進行間距):x(m/h)/2a(人/h)
対面方向間距(以下、対向間距):y(m/h)/2b(人/h)
単線と見なした場合の間距(以下、単線間距):
x/2(a+c)=x/2(a+b*x/y)=xy/2(ay+bx)
と表される。(ただし、当調査区間においては急峻な場所が少ないため一定速度での歩行(1.1m/s) 19と見なし、x=yとなる)
例えば、鳩待峠から山ノ鼻方向に向かって10:00に出発した人が体験した通過区間別人数は、表−2より、進行方向:323人/30分、対面方向:131人/30分であるため、
進行間距:3,960/(2*323)≒ 6.13(m/人)
対面間距:3,960/(2*131)≒14.08(m/人)
単線間距:3,960÷2(323+131)≒ 4.36(m/人)と算出される。
(豭)混雑感率及び混雑不快感率の分析
(豗)で照合された通過区間別人数と混雑意見及び混雑不快意見の結果を(豩)で算出された3タイプ間距毎に階級分類し、各混雑意見数・混雑不快意見数を該当通過区間別人数で除した値を各々混雑感率及び混雑不快感率とした。その変化について3タイプ別分析及び進行−対面間距組合せ分析を行い、混雑感への影響特性を把握した。
次に、混雑不快意見内容を整理し、当該間距中央値、平均値、最大・最小値、標準偏差値を求め、各項目における特性を把握した。
(豳)尾瀬における限界間距及び理想間距の設定
最後に歩行イメージによる限界及び理想間距値と、(豭)で明らかになった歩行体験による各間距値との比較を行うことでその妥当性を確認し、尾瀬ヶ原における限界及び理想間距を設定した。
3.研究結果
(1)間距と混雑感率及び混雑不快感率との関係
最初に各調査日における歩行全体を通しての混雑感等に関する比率を見ると(表−3)8日は特に高く、混雑感67.7%、混雑不快感51.8%と過半数の人が何らかの混雑不快感を受けたことが分かった。次に、流動調査結果と照合できた通過区間別人数(n=708) 、混雑意見(n=196)及び混雑不快意見(n=144)を単線・進行・対面の各間距階級における混雑感率及び混雑不快感率として整理すると表−4及び図−4で表され、各々以下の事が述べられる。
①単線間距では、混雑不快感率は4.0m/人未満で51.0%、混雑率は6.0m/人未満で48.2%とほぼ過半数に達する。また、間距が長くなる(利用密度が低くなる)につれ両比率共に下降する。
②進行間距では、混雑感率及び混雑不快感率は1 0.0m/人未満においては各々50%、40%前後とほぼ一定の値を示すが、10.0m/人を境に両比率共急激に下降する。
③対面間距では、6.0m/人未満においては両比率共70.4%と3タイプの中で最高比率を示す。また間距が長くなるにつれ50.0m/人までは徐々に下降するが、50.0m/人以上で再び上昇する。
以上の3点より、混雑感率及び混雑不快感率は、単線及び進行間距との関係が強いと言える。対面間距との関係については、50m/人以上で両比率共上昇していることから、利用密度の低い状態においては対面間距だけでは混雑を感じる要因には成り得ず、進行間距との組合せによって左右される要素であると推測される。
そのため、複線と見なした場合の間距と混雑感及び混雑不快感との関係をさらに詳しく把握するため、進行−対面間距の組合せによる混雑感率及び混雑不快感率を表−5に整理した。その結果、単線間距では同密度で表される1対の進行−対面間距の組合せ(本調査においてn=10以上で確認されたもの5組)を比較すると、混雑感率及び混雑不快感率に差異が確認され、両方向とも利用密度が比較的高い状況(両間距共10m/人未満)においては進行方向よりも対面方向の利用密度の方が混雑感に及ぼす影響が強く、対面方向の混雑が混雑不快感の決定的要因となっていることが分かる。特に図−5に示したとおり、単線間距域が2.4〜3.8(m/人)と表される進行−対面の1対の利用状況〔進行:8〜10(m/人)、対面:6(m/人)未満〕と〔進行:6(m/人)未満、対面:8〜10(m/人)〕に該当する混雑感率及び不快感率はそれぞれ、〔71.4%・71.4%〕、〔30.8%・30.8%〕であり、その差は顕著である。
反対に利用密度が両方向とも比較的低い状況(両間距共10m/人以上)では対面方向よりも進行方向の利用密度の方が混雑感に対する影響力は強くなると言える。例えば、単線間距域が8.3〜20.0(m/人)と表される進行−対面の1対の利用状況〔進行:10〜20(m/人)、対面:50(m/人)以上〕と〔進行:50(m/人)以上、対面:10〜20(m/人)〕に該当する混雑感率及び混雑不快感率はそれぞれ、〔17.2%・10.3%〕、〔0.0%・0.0%〕であること等が挙げられる。
(2)間距と混雑不快意見内容との関係
次に、混雑不快意見の内容別分類を行った所14項目に分類され、非混雑感等その他混雑意見を含めると全20項目に分類された。その内容別に中央値・平均値・最小-最大値・標準偏差値20を表−6に示した結果、混雑不快感の単線間距標準偏差値は比較的小さくσ=1〜4に集中し、また混雑不快感の単線間距中央値は4m/人前後に集中した。反対に非混雑感の単線間距標準偏差値は、混雑不快感と比較すると、より大きくσ=15.03であり、また単線間距中央値は9.2m/人であった。従って、単線と見なした場合、混雑不快感を受けた時の利用密度に関する個人の感覚は比較的共通しており、中央値で示すと4m/人前後(平均値:5m/人前後)であり、反対に、非混雑感を受けた時の利用密度に関しては、中央値で示すと9.2m/人(平均値:14.4 m/人)であるが、個人差が大きく個人によってその感覚のばらつきは大きいといえる。
次に、混雑不快感の内容別に進行側と対面側の標準偏差値を比較すると、⑨以外は進行側が小さい数値を示し、(1)の結果と同様、基本的には進行方向の利用密度が混雑不快感の受け方に強く影響しているといえる。しかし、対面方向の利用密度が混雑不快内容に全く影響しないわけではなく、その内容の違いによって影響力が異なると考えられるため、n=10以上の項目①〜⑧について対面側の標準偏差値について確認を行った。
その結果σ=150未満の項目は、②自分のペースで歩けない(もっとゆっくり歩きたい)④ゆっくり写真が撮れない⑥ゆっくり観賞できない 等、木道上で止まったりゆっくりしたりする行為を阻害されることに対しての不快内容が多く見られた。
その原因としては、通常止まりたい時には右側通路(進行方向)の人の流れから外れるため左側通路(対面方向)へ回避するはずが、対面方向が混んでくるとその行為が出来難くなるからであると推測される。反対に、σ=150以上の項目は①自分のペースで歩けない(もっと速く歩きたい)③自分のペースで歩けない(もっと速く/遅く両理由)⑤団体が邪魔 等他人よりも速く歩く行為を阻害されることに対しての不快内容が多く見られ、その原因としては、進行方向が行列で混雑してくると全体の歩行速度が低下し焦燥感が募るからであろうと推測される。
また、混雑不快内容の進行−対面間距の組合せ(中央値)を散布図で示すと(図-6)、前者(対面σ<150)は対面間距が比較的小さい所に散布することが確認され、(1)の結果である対面間距6m/人未満での混雑不快率が7割を越えていた主な原因は、ゆっくり観賞する行為の阻害に対する不満であることが明らかとなった。
(3)歩行イメージによる間距値と歩行体験による算定間距値との比較及び尾瀬ヶ原における限界−理想間距値の妥当性確認
最後に、歩行イメージによる限界及び理想間距値は表−7に示され21、(2)で指摘した傾向と同様に、以下の点から限界間距の方が個人による感覚の差が少ないことが分かった。
①限界間距は「中央値:平均値=4.0m/人(木道1本分):4.3m/人」とほぼ一致するのに対して、理想間距は「中央値:平均値=12.0m/人(木道3本分):42.0m/人」と3.5倍の開きがある。
②限界間距の回答値が0〜28m/人であるのに対し、理想間距の回答値は0.5〜500m/人である。
③限界間距の最頻値 (4.0m/人) の比率が24.0%であるのに対し、理想間距の最頻値(4.0m/人) の比率は13.0%である。
次に歩行体験による算定間距値(表−6)と比較すると、各値とも複線と見なした場合の各々の間距値(進行間距・対面間距)よりも単線間距結果と近い値を示し、
混雑不快感単線間距中央値:歩行イメージによる限界間距中央値=4.2:4.0(m/人) とほぼ一致し、平均値による比較
〔5.3:4.3(m/人)〕よりもその差は少なかった。また、
非混雑感単線間距中央値:歩行イメージによる理想間距中央値
=9.2:12.0(m/人) と2.8m/人の差が見られたが、平均値による比較〔14.4:42.0(m/人)〕よりもその差は少なかった。
従って、歩行体験による間距と混雑感の関係を総括するに当たっては、表−6の「単線間距」且つ「中央値」を採用し、「限界間距=4.2m/人(混雑不快感単線間距中央値)」、「理想間距=9.2m/人(非混雑感単線間距中央値)」とすることが妥当であるといえ尾瀬ヶ原の木道上における限界−理想間距図は図−7として示される。
4.考察
本研究により次の点が明らかとなった。
①混雑感及び混雑不快感を受ける時の単線間距は個人差が比較的小さく、混雑不快感の単線間距中央値が「限界間距」として表され、その数値は4.2m/人である。
②混雑を感じない時の単線間距は個人差が大きいが、非混雑感の単線間距中央値が「理想間距」として表され、その数値は9.2m/人である。
③単線間距は同じであっても、進行−対面間距の組合せによって混雑感率及び混雑不快感率は変化し、特に利用密度の高い状態での対面方向の混雑は、混雑不快感の決定的な要因となる。
④基本的に進行方向の利用密度が混雑不快感に強く影響を及ぼすが、ゆっくり観賞したり木道上に立ち止まったりする行為を阻害される不快内容においては、対面方向の利用密度も混雑不快感に影響を及ぼす。
上記③④に関しては、本研究において新たに確認された傾向であり、今後木道上に適宜待避所を設置する等、混雑による不快点を取り除いていくための対策検討に役立つと考えられる。
上記①②に関しては尾瀬ヶ原において新たに確認された傾向及び基準値であり、今後当該地区の適正利用を検討するに当たっての参考となり得る値であるといえる。しかし本調査において、
①自然公園の中では比較的観光地としての認識が高い尾瀬ヶ原を対象地としたこと
②年間で最も混雑する時期を調査日として設定したこと
③尾瀬ヶ原の中でも最も混雑する区間(鳩待峠−山ノ鼻−牛首分岐)が対象区間として含まれていること
等から、自然公園全体における当基準値の位置づけとしては、比較的高密度を許容する側である可能性が高く、もし自然公園全体の参考基準値として適用した場合、場所によっては利用者をより多く許容してしまう(過剰利用を促進してしまう)問題が出てくる危険性が高い。従って、自然公園の中でも比較的行楽地として認識され、尾瀬ヶ原の利用形態や立地条件と類似する場所に関しては、本研究結果の基準値適用の可能性はありうるが、それ以外の場所に関しては、各利用形態・立地条件に見合ったものを各々検討することが望ましいと言える。また、同じ公園内においても森林空間や湿原空間等の違いも認められている22ため、今後それらの違いによる基準値区分の検討も課題として挙げられる。
以上の通り、その基準数値の大小に関しては各自然公園ごとに慎重に検討する必要があるが、本研究においては、面接調査と流動調査の組み合わせによって、自然公園の限界利用密度と理想利用密度を算出する方法を新たに確立することができたことは大きな成果であると言える。
補注及び引用文献
1:(財)尾瀬保護財団/尾瀬入山適正化検討委員会(1998):尾瀬入山適正化検討委員会最終報告「入山者増がもたらす入山者自身への影響」:尾瀬保護財団ホームページ<http://www.oze-fnd.or.jp/>,1998.6.18更新,2002.10.28参照
2:横山隆一(2002):会報『自然保護』No.469「尾瀬・至仏山の保護に取り組みます」:日本自然保護協会ホームページ
< http://www.nacsj.or.jp/database/oze/oze-020901-no469.html>,
2002.8.29更新,2002.10.28参照
3:古谷勝則・油井正昭・赤坂信・多田充・大畑崇(2001):マイカー規制のもたらす自然公園利用の諸問題:千葉大学園芸学部学術報告第55号別刷,38pp
4:(財)尾瀬保護財団/尾瀬入山適正化検討委員会(1998):尾瀬入山適正化検討委員会最終報告「対策の効果」:尾瀬保護財団ホームページ
<http://www.oze-fnd.or.jp/>,1998.6.18更新,2002.10.28参照
5:環境省(2002):自然公園のあり方に関する中間答申:環境省ホームページ
<http://www.env.go.jp/council/toshin/t122-h1308/t122-h1308-1.html>,2002.1.29更新,2002.10.28参照
6:R・ソマー(1972):穐山貞登訳:人間の空間:デザインの行動的研究:鹿島出版会
7:E・ホール(1970):日高敏隆,佐藤信行訳:かくれた次元:みすず書房
8:高橋鷹志・西出和彦(1986):空間における人間集合の研究-その10近接域空間の考察-:日本建築学会大会学術梗概集(北海道),527-528
9:北田・他(2001):通路空間にいる人間の個体距離に関する観察研究:日本建築学会大会学術梗概集(関東),715-716
10:高橋鷹志・他(1997):シリーズ<人間と建築>1,環境と空間:朝倉書店,51-87
11:J・J・フルーイン(1974):長島正充訳:歩行者の空間:理論とデザイン:鹿島出版会
12:芦原義信(1975):外部空間の設計:彰国社,56pp
13:渋谷昌三(1990):人と人との快適距離:NHKブックス,19pp
14:江山正美・進士五十八・他(1974):自然公園における収容力に関する研究:環境庁(現 環境省)
15:小林昭裕・愛甲哲也(2001):カムイワッカの利用状況と,そこで利用者が示した混雑感や許容限界,対処行動:ランドスケープ研究64(5),723-728
16:愛甲哲也・鄭佳昇・浅川昭一郎(2002):自然公園における写真を用いた混雑感と許容限界の把握について:ランドスケープ研究65(5),669-672
17:「混雑感」は不快であるか否かに関わらず混雑を感じたことを示し、「混雑不快感」は混雑による不快を感じた場合のみを示す。
18:歩行イメージによる限界間距の質問内容:もしあなたが一人で尾瀬ヶ原に来て、木道を歩いているとしたら、前の人との距離がどの位まで狭まると、嫌だなと思いますか。木道1本分の長さは約4mですので、それを目安としてお答えください
歩行イメージによる理想間距の質問内容:もしあなたが一人で尾瀬ヶ原に来て、木道を歩いているとしたら、前の人との距離がどの位だと、気持ちよいと思いますか。木道1本分の長さは約4mですので、それを目安としてお答えください
19:(財)尾瀬保護財団(2001):尾瀬における適正収容力に関する調査報告書,45pp
20:平均値・中央値・標準偏差値の算出に当たり、間距500m/人以上の数値は全て500m/人(1人の人間として認知できる可視限界)として置き換えた。
21:「特になし」は計算から除外し、言葉による回答は以下の数値として置き換えた。目の前=0.5m、足がぶつかる位=0.5m、声が聞こえない位=15m、数十m=30m
22:(財)尾瀬保護財団(2001):尾瀬における適正収容力に関する調査報告書,37-44