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日本造園学会誌 研究発表論文集22
 vol.67 no.5/2004.03
尾瀬ヶ原における混雑日・閑散日の限界・理想間距比較及びその影響要因分析 /田村裕希・麻生恵

An analysis of Minimum and Standard Comfort Distance and its influential factors on Peak and Off-peak Days at Ozegahara of Nikko National Park   /Yuki TAMURA, Megumi ASO

キーワード: 国立公園, 混雑感, 尾瀬ヶ原, 適正収容力, 限界間距, 理想間距
Keywords: National Park, crowding, Ozegahara, carrying capacity, Minimum Comfort Distance, Standard Comfort Distance

摘要:
 日光国立公園の尾瀬ヶ原において適正収容力の参考値となり得る、対照的な利用密度状況での「限界間距」「理想間距」を各々導き出し、各数値への影響要因を把握することを目的とした。そのため「混雑日」と「閑散日」の2回に渡って面接調査を行い、各日における限界・理想間距と属性等との関係を分析した。
その結果、閑散日の方が空いている状況を好む傾向を示し、各日の限界−理想間距は、混雑日4−12m/人、閑散日8−35m/人であった。混雑日における間距への主な影響要因としては、当日回答者の体験した混雑度と予定コース距離・予定滞在時間が挙げられ、閑散日においては来訪回数等が挙げられた。
Summary:
This study aims to determine a suggested carrying capacity by determining a Minimum Comfort Distance and Standard Comfort Distance on peak and off-peak days in Ozegahara of Nikko National Park.
The study also sought to understand other factors that could affect the results. We set up interviews on peak and off-peak days to measure the relationship between Minimum Comfort Distance and Standard Comfort Distance on each day.
As a result, there was a tendency for people to prefer more distance on the off-peak day. The Minimum Comfort Distance to Standard Comfort Distance was 4 to12 meters per person on the peak day and 8 to 35 meters per person on the off-peak day. Major factors influencing these distance results were the amount of congestion respondents experienced while on park trails, trail length, and amount of time each respondent spent at the park on the peak day, and were the number of visiting times on off-peak day.
全文:
1頁 2頁 3頁 4頁 5頁 6頁

1.研究の背景及び目的
 日光国立公園尾瀬地区の入山者数変動に関する特徴として、混雑日と閑散日及び混雑場所と非混雑場所の差が激しいことが挙げられる1)。特に混雑日・混雑場所においては木道上の利用者行列の発生や植生の踏み荒らし等の過剰利用が問題となっており2,3)、(財)尾瀬保護財団等の関連機関はパンフレットやホームページによって閑散日や非混雑場所への利用の分散化を促している1,4,5)。
 自然公園における適正な利用の推進は「保護」と「利用」の両面から図ることが必要であるとされ6)、特に「利用」に関しては対人距離・パーソナルスペース等の利用者の快適性を考慮した「人間標準空間」の配慮が必要とされている7)。また自然公園の「混雑感」はある空間の利用密度に対する負の評価である8)ことから、適正な利用の推進に当っては、利用者の間隔(空間)を適度に確保することによる「混雑感の軽減」が重要であるといえる。しかし「混雑感」は実際の利用密度と強い関連性を持つと同時に、個人の性格や属性または他人との関係等によって多様に変化するため9,10,11)、今まで様々な方法による混雑感要因や影響構造の解明に関する研究が行われてきた。
 愛甲ら12)は大雪山国立公園において混雑感と利用密度の「実際値」や個々人の規範を考慮した「知覚値」との関係を分析し、混雑感は知覚値とより強い関連性を示すことを明らかにした。さらに利用者の事前経験が混雑感に影響を与える傾向が認められたが、その他影響因子の解明については今後の課題として挙げられている。小林ら13)は知床国立公園を対象地として、遭遇人数の許容限界及び混雑の回避行為とその要因について検討を行い、雑踏を不快に感じる利用者は静かな環境へ回避する傾向が強いことを明らかにした。しかし、利用密度の高い地区での利用者集団は許容限界を持たない傾向にあるとし、今後は利用密度の低い箇所との比較評価を組合せること等によって対象地の混雑度を総合的に明らかにすることの重要性を指摘した。田村ら14)は年間で最も混雑する時期の尾瀬ヶ原の木道上において、利用者の混雑意見とその意見が出された時点の実際の利用密度を照合分析し、「混雑による不快を感じる間距=4.3m/人(中央値)」、「混雑を感じない間距=9.2m/人(中央値)」を導き出した。さらに進行・対面方向別利用密度の違いによる混雑感率の変化傾向や混雑不快内容別間距の差異についても明らかにしたが、ここでも低利用密度状況での混雑感については明らかにされていない。
 しかし先述の通り、尾瀬では集中利用の分散化を呼びかけているため、混雑日や混雑場所を意識的に回避している人がいる可能性があり、それに伴って混雑状況の違いによる利用者の混雑意識に違いがあることが推測される。そのため、尾瀬における適正利用を検討するに当たっては、高利用密度状況における利用者の混雑の捉え方を把握すると同時に、低利用密度状況においても明らかにし、多面的に利用者の混雑意識を把握しておくことが望ましいといえる。
 以上のことから本研究は、日光国立公園尾瀬ヶ原における対照的な利用密度の日(以下「混雑日」及び「閑散日」と称す)において調査を実施し、各日の木道上における「不快に感じる他人との距離(以下、「限界間距」と称す)」及び「快適に感じる他人との距離(以下、「理想間距」と称す)」を導き出した上で、各間距への影響要因を把握することを目的とした。

2.研究方法
(1)調査地・調査日の選定
 調査対象地としては、入山者数変動が激しい日光国立公園の尾瀬ヶ原を選定した(図−1)。
 混雑日と閑散日の2つの調査日に関しては、過去の年間入山者数データを確認し、「混雑日」として例年最も混雑するミズバショウ期の休日2002年6月8日(土),9日(日)を、「閑散日」として利用者が減少する8月下旬の閑散期の平日2003年8月26日(火),27日(水)を選定した15)(表−1)。
(2)調査方法
 「混雑日」における「混雑による不快を感じる間距」及び「混雑を感じない間距」を導き出した先述の田村ら14)の調査では、回答者が実際に体験した利用密度に対して感想を求める方法を採用した。しかし本研究では、一日を通して空いている状態の「閑散日」であっても、「限界間距」の回答を得ることが必要となるため、上記方法は不適当である。したがって、本研究では尾瀬ヶ原の木道16)を歩行している利用状況を回答者にイメージしてもらうことによって「限界間距」及び「理想間距」を回答させる方法を採用した(図−2)。
 また、1日の利用密度変化の激しい「混雑日」に関しては、当日回答者の通った混雑状況を照合するため、面接調査と流動調査を同時に行った。「閑散日」に関しては、入山者数は混雑日の1割程度であるため(表-1)、通過混雑状況の確認は不要と判断し流動調査は行わず面接調査のみ実施した。
(3)分析方法
 混雑日と閑散日の利用者属性比較を行った後、限界間距及び理想間距に関する個別及び組合せ分布について、中央値・平均値・標準偏差・累積度数等を整理し、各日における各間距の差異を把握した。
 次に、「当日回答者の体験した最も混雑した利用密度(以下「最大流動量」と称す)」「予定コース距離」「予定滞在時間」「来訪回数」「来訪人数」「混雑日の回避意向」の6項目(表−2)について、限界−理想間距との相関及び各間距と各項目の関係を整理し、各間距に与える影響要因を分析した。

3.研究結果
(1)混雑日と閑散日の利用者属性比較
 混雑日(計210サンプル)と閑散日(計70サンプル)の利用者属性各項目の中央値、平均値、標準偏差、並びに両日間の差の検定(マン・ホイットニのU検定:以下「U検定」と称す)結果を表−2に示した。これによると「来訪回数」の中央値は閑散日が1回多く、5%水準での有意差が認められた。その他項目については有意な差は認められなかった。
(2)混雑日と閑散日の限界−理想間距比較
 各日における限界−理想間距を集計した結果、主に以下の点が明らかとなった(表−3,図−3)。
①限界−理想間距の中央値は「混雑日:4.0-12.0m/人」「閑散日:8.0-35.0m/人」の組合せとなり、閑散日の方が混雑日より各々大きい値を示した。また両日間の差の検定(U検定)の結果、両間距とも1%水準での極めて高い有意差が認められた。
②閑散日の方がばらつきは大きく、特に限界間距の標準偏差は混雑日と比較して10倍以上の開きがある。
また、回答者が答えた限界−理想間距の組合せは混雑日:113通り、閑散日:49通りであり(表−4)、それらを階級区分したところ17)、混雑日は両間距とも混雑を許容する側(左下)に、閑散日は空いている状況を好む側(右上)に偏りが見られ、特に以下領域についてはその差が顕著であった(図−4・5)。
①「限界4m/人未満、理想100m/人未満」の組合せ領域の回答比率は「混雑日:閑散日=47.5%:12.1%」と、混雑日の方が閑散日よりも約4倍高い。
②「限界50m/人以上、理想100m/人以上」の組合せ領域の回答比率は「混雑日:閑散日=0.0%:13.7%」と、閑散日特有の領域である。
 以上のことから、閑散日利用者は混雑日利用者よりも空いている状況を志向する傾向にあることが明らかとなった。

(3)限界−理想間距への影響要因分析
豗)各項目の間距への影響把握
 各間距に及ぼす各項目の影響を把握するに当たり、最初に混雑日・閑散日における限界・理想間距と各項目との相関係数を表−5に整理した。その結果、項目間同士の関係としては「予定コース距離」と「予定滞在時間」の相関係数は各日とも約0.7と高い数値を示した(以下、同一の要素として扱う)。間距と項目間に関しては、「混雑日理想間距と予定滞在時間」及び「閑散日理想間距と予定コース距離」において5%水準での有意差が認められた。ただしそれら数値は様々な要因が影響した結果であるため、影響要因を分析するに当っては相関係数と併せて、各項目と間距値との変動関係を把握することが必要であるといえる。そのため、「各日における各項目と階級別間距値の関係(表−6、図−618))」と「各日における各間距と階級別項目の関係(表−8、図−718))」を整理し、以下それらを総合的に参照し分析することとする。
 最初に、全体として以下の2点が明らかとなった。
①限界間距と理想間距を比較すると、各日・各項目においてグラフの傾き等がほぼ類似した変動傾向を示す。
②混雑日と閑散日を比較すると、グラフの傾き(相関係数の符号)が逆転する項目が多い。
 次に、「混雑日」の影響要因としては、主に以下のことが述べられる。まず「最大流動量」と各間距は負の関係であり、短い間距を回答する人ほど、混雑区間を通過した傾向にある。理由としては、混雑区間を通過した人はその状況に慣れ、その結果、混雑を許容(妥協)するようになったと考えられる19)。次に、「予定コース距離・予定滞在時間」と各間距は正の関係であり、長い間距を回答する人ほど時間・距離が長くなる傾向にある。理由としては、混雑入山口からより空いている奥地へ行こうとする意識20)(混雑場所の回避)、または、朝夕の空いた時間帯を体験するために滞在時間を長くとろうとする意識21)(混雑時間の回避)が働くためであることが考えられる22)。また、「最大流動量」と「予定コース距離・予定滞在時間」の相関係数(約-0.3)から、「予定コース距離・予定滞在時間」の短い人は、より混雑を体験する傾向にあるといえるため、両要因が相乗的に作用しているとも考えられる。「来訪回数」「来訪人数」は両者とも各間距との相関係数は低く(-0.03〜0.05)、明確な比例関係は認められないため影響力としては比較的弱いと解釈される。
 一方「閑散日」に関しては、「来訪回数」を回数別に区分したところ、「2回目以上」の人は「1回目」の人より間距が小さく、ばらつきも少ない傾向を示した(表−8)。理由としては、来訪回数を重ねるほど、以前、尾瀬ヶ原において混雑状況を体験した可能性は高くなるため、それまでの体験をもとに尾瀬ヶ原としての妥当性を加味して各間距を回答したためであると解釈できる19,23)。「予定コース距離・予定滞在時間」は混雑日とほぼ反対の傾向を示し、各項目数値が大きいほど小さい間距を回答する傾向が認められた。さらに、「予定コース距離」を「15km未満/15〜20km未満/20km以上」に、「予定滞在時間」を「日帰り/宿泊」に区分したところ顕著な差が見られ、「日帰り」または「20km未満」の人は限界・理想間距とも大きな値を示した。理由としては、閑散日は常に空いている傾向にあるため、特に混雑日のような「混雑時間の回避」や「混雑場所の回避」を行わなくても空いた状況を体験できるからであるといえ、「予定コース距離・予定滞在時間」は混雑日ほど間距への影響力は強くないと推測できる。
 また、「来訪人数」に関しては、「1人/2人/3人以上」に区分したところ、「1人・2人」は各日・各間距によって多様に変化するが、「3人以上」はほぼ共通して混雑を許容する傾向にあることが認められた。
 以上のことから、間距値への影響力の優先順位は特定できないが、「混雑日」は「最大流動量」(「当日の混雑体験量」の指標)と「予定コース距離・予定滞在時間」(「混雑場所・時間の回避」の指標とも解釈される)に影響される傾向にある。「閑散日」は、「来訪回数」(「過去の混雑体験量」の指標とも解釈される)や「来訪形態」(来訪人数・予定コース距離・予定滞在時間)が複合的に影響しているといえる。
 
豩)閑散日における混雑日回避者の把握
 最後に、混雑日と閑散日の間距値結果の差の影響要因として考えられる24)、「閑散日における混雑日回避者(以下、回避者と称す)」の整理を行う。
 表−7のとおり、閑散日の回答者70人中、回避者は35人と50%を占め、「特に混雑日を回避したわけではない人(以下、非回避者と称す)」と同数であった。
 回避者・非回避者の各項目は、特に顕著な差異は見られなかった。間距に関しては、平均値で見ると限界・理想間距とも回避者の方が大きい値を示すが、中央値で見ると限界間距は両者とも8.0 m/人と同じ値を示し、理想間距は回避者:非回避者=32.0 m/人:37.5 m/人と、反対に非回避者の方が空いている状況を好む傾向を示した(表−8)。また、4項目及び限界・理想間距について両者間の差の検定(U検定)を行ったところ、全てにおいて有意差は確認されなかった。
 したがって、「混雑日回避意向の有無」は混雑日と閑散日の間距結果の差の影響要因としては比較的弱いと判断される。

4.まとめ
 本研究の結果から、以下のことが重要な点としてまとめられる。
①限界−理想間距の中央値は混雑日:4.0-12.0m/人、閑散日:8.0-35.0m/人の組合せとなり、閑散日の方が混雑日より各々大きい値を示した。
②混雑日と閑散日の限界−理想間距の組合せを比較すると各日の分布に偏りが見られ、「限界4m/人未満、理想100m/人未満」「限界50m/人以上、理想100m/人以上」の2領域は各日の占める比率の差が特に大きく、前者は混雑日が、後者は閑散日が高いことが明らかとなった。
③「予定コース距離」「予定滞在時間」「来訪回数」と限界・理想間距との関係は、「混雑日」と「閑散日」の違いによって変動が逆転する傾向にある。
④限界・理想間距への影響力の優先順位は特定できないが、「混雑日」は「最大流動量」(「当日の混雑体験量」の指標)と「予定コース距離・予定滞在時間」(「混雑場所・時間の回避」の指標とも解釈される)に影響される傾向にある。「閑散日」は、「来訪回数」(「過去の混雑体験量」の指標とも解釈される)や「来訪形態」(来訪人数・予定コース距離・予定滞在時間)が複合的に影響しているといえる。
⑤「閑散日における混雑日回避者」は50%を占めることが明らかとなったが、回避者と非回避者の間距値には明確な差は確認されなかったため、「混雑日回避意向の有無」は混雑日と閑散日の限界・理想間距差の影響要因としては比較的弱いと判断される。

以上の通り本研究では、尾瀬ヶ原の対照的な利用密度の日(混雑日・閑散日)における各利用者の示した限界・理想間距が明らかとなり、それらの数値には違いが生じることが確認された。さらに各日における両間距への主な影響要因を推測することができた。しかしその影響力の優先順位や、混雑日と閑散日の間距差の影響要因については特定できなかったため、今後はそれらの解明(当日の利用密度や過去の混雑体験との関係確認等)を行い、さらに入山者数変動によって利用者の示す限界・理想間距がどのように変化するかについても把握することが重要であるといえる。また、尾瀬ヶ原の適正利用の検討にあたっては、利用者が混雑を感じない状況にすることが基本であるため、「混雑日の適正利用」と「閑散日の適正利用」といったように、利用密度レベルに配慮した適正利用の考え方も必要であると思われる。

<補注及び引用文献>
1)片品村尾瀬交通対策連絡協議会,福島県尾瀬自動車利用適正化連絡協議会 (2003):尾瀬地域の交通対策のお知らせ−自然保護と交通安全のために−:(財)尾瀬保護財団
2)小寺弘之:尾瀬保護財団設立趣意書:尾瀬保護財団ホームページ
<http://www.oze-fnd.or.jp/syuisyo.html>,
1995.8.3更新,2003.10.29参照
3)水野憲一(2003):会報『自然保護』2003年1/2月号「尾瀬の保全目標をつくり直そう」:日本自然保護協会
4)群馬県自然環境課:尾瀬の交通規制:群馬県ホームページ
<http://www.pref.gunma.jp/hpm/kanshizen/00120.html>,
2003.4.21更新,2003.10.29参照
5)(財)尾瀬保護財団:入山の心得:尾瀬保護財団ホームページ <http://www.oze-fnd.or.jp/kokoroe.html>,
2003.10.28更新,2003.10.29参照
6)環境省(2002):自然公園のあり方に関する中間答申:環境省ホームページ<http://www.env.go.jp/council/toshin/t122-h1308/t122-h1308-1.html>,2002.1.29更新,2003.10.29参照
7)江山正美・進士五十八・他(1974):自然公園における収容力に関する研究:環境庁(現 環境省)
8)Shelby,B.and Heberlein,T.A.(1986):Carrying Capacity in Recreation Settings. Oregon State University Press,Corvallis,164pp
9)岩田紀(2001):快適環境の社会心理学:ナカニシヤ出版,37-41
10)R・ソマー(1972):穐山貞登訳:人間の空間:デザインの行動的研究:鹿島出版会,45-47
11)渋谷昌三(1990):人と人との快適距離:NHKブックス,34-36
12)愛甲哲也・浅川昭一郎・小林昭裕(1992):大雪山国立公園における登山利用者の混雑感に関する研究:造園雑誌55(5),223-228
13)小林昭裕・愛甲哲也(2001):カムイワッカの利用状況と,そこで利用者が示した混雑感や許容限界,対処行動:ランドスケープ研究64(5),723-728
14)田村裕希・望月寛・麻生恵(2003):尾瀬ヶ原の木道上における利用者間の距離と混雑感及び混雑不快感との関係性:ランドスケープ研究66(5),705-710
15)鳩待峠口に設置されているセンサーでカウントされた2002年(5/17〜11/4の計172日間)の尾瀬ヶ原への入山者数は、「2(最小)〜499人:48日, 500〜999人:59日, 1000〜1999人:38日, 2000〜2999人:20日, 3000〜3999人:0日, 4000〜4999人:8日, 5000〜5544(最大)人:4日」であり、調査対象日(混雑日)の6/8は1番目、6/9は5番目に多い日であった。また、閑散日として選択した2003年8/26.27(約500人)の入山者数は、最大入山者数の1割程度であるため閑散日として妥当であると判断した。
16)尾瀬ヶ原では湿原内の保護のため木道によって歩行可能な場所を限定している。また、木道は2本1組で敷設されており、歩行する際は右側通行が原則となっている。
17)図—5,6の階級区分:「20m未満」は木道の本数(4m/本)で回答する傾向が強かったため、4m単位で区分した。「20m以上」は10m単位または100m単位で回答する傾向にあったため「20m以上50m未満」「50m以上100m未満」「100m以上」の3つに区分した。
18)表—6・8、図—6・7の階級区分:各日の階級別サンプル数ができるだけ均等に且つ各項目の変動傾向が明確になるように区分した。表—6、図—6の混雑日限界間距「1.0m未満」に関してはサンプル数が9と少ないが、全項目の示す数値が「1.0m以上」の人と傾向が異なったため「1.0m未満」「1.0m以上2.0m未満」に区分した。
19)解釈の根拠:
①「R・ソマー(1959)Studies in personal space.Sociometry,22,247-260( 前記11)で引用 )」では「パーソナルスペースは人の体を取り巻く泡のようなものであり、その人を取り巻く状況に応じて伸縮するものである。」と指摘している。
②前記 10),45-64「空間の侵入者」の中で「パーソナルスペースは持ち運びのできるテリトリーといわれ(中略)しかし混雑のような条件下では、これがなくなってしまう。」と述べており、大学キャンパスでの低密度群集と高密度群集の1人当りの面積差を事例として挙げている。
20)尾瀬ヶ原で最も混雑する区間は「鳩待峠−山ノ鼻」であり、次いで「山ノ鼻−牛首分岐」である。それ以東は木道の分岐や利用者の折り返し等によって奥に行くほど減少傾向にある。
21)マイカー規制のかかる混雑日において鳩待峠口の入下山時間帯はバス時刻の関係上午前4時〜午後16時前後となる。また鳩待峠口の入山者集中時間帯は午前8〜9時前後、下山者の集中する時間帯は午後14〜15時前後であり、特に混雑日は下山時の集中が顕著である。
22)ただし混雑時間・場所の回避意向の有無については、各回答者に対して未確認であるため影響要因として断定はできない。
23)ただし過去の混雑体験に関しては、各回答者に対して未確認であるため影響要因として断定はできない。
24)前記13)において「雑踏を不快に感じる傾向の強い利用者はこれを回避する意識や行動に出る傾向に強い」と示されていることから「混雑日から閑散日への回避者が閑散日の間距中央値・平均値を上げている可能性が高い」と解釈した。